【第1回】復職は“リスタート”。元に戻すより、新しく整える

ワーキングマザーが朝の光の中で手帳を開き1日の予定を立てている様子子どもの靴や仕事用バッグが背景に映り家庭と仕事の両立を象徴するビジュアル

そろそろ、来年の手帳を選ぶ季節。

街に並ぶカレンダーやスケジュール帳を見ると、
「来年こそ、時間をうまく使いたいな」と思う人も多いのではないでしょうか。

育休から復職したばかりのママにとっても、“時間”は毎日を左右する大きなテーマ。
だからこそ、来年を見据えながら、自分らしい時間の整え方を少しずつ見直してみましょう。

朝、保育園の荷物を抱えながら思う。

「今日もちゃんと間に合うかな」
「昨日のメール、返し忘れてる気がする」
「明日の資料、いつ作るんだっけ」

——これが“普通”です。

復職後の数週間は、仕事と家庭の歯車がうまくかみ合わないのが当たり前。
それなのに私たちはつい、「前みたいに働けない」「迷惑かけてる」と自分を責めがちになります。

でも、復職は“出産前の働き方に戻ること”ではありません。
今の自分に合う働き方を、少しずつつくり直していく時期です。

STEP1:「どのように1日を過ごしているか」を書き出す

いきなり「働き方を整える」と言われても、子どもが寝ない、夜泣き、朝食べない、洗濯回らない……。
現実は理屈では動きません。だから、まずは「現実を見える化」することから。

  • 起床から就寝までのタイムラインを書く
  • 「ここが一番つらい」時間帯に★マーク
  • そこに関係する要因(人・物・時間)をメモ

例:
・7:30〜8:00 登園準備:子が靴下拒否 → 出発5分遅れ
・17:30〜18:30 帰宅後:洗濯+夕飯+泣きぐずりで混乱
・21:00以降 寝かしつけで寝落ち → 仕事の準備不可

→ この★時間を、翌日の時間配分の見直しの起点にします。

STEP2:「理想」ではなく「現実ベースの最適解」を描く

“時短勤務”を取っても、「時間が足りない」より「やることが減らない」問題のほうが深刻です。

だからまずは、「どんな状態なら今より回るか」を考えてみましょう。
目指すのは「理想の働き方」ではなく、“現実の中で回る1日の型”です。

【1週間の目標を立てるときの書き方例】

目的:夕方の“保育園ダッシュ”を少しでも穏やかにする

・朝の支度を15分早く始める(保育園準備を前倒し)
・午前中に「今日の山場タスク」を終わらせる
・夕方の打ち合わせは翌朝対応に切り替える提案をする

・「完璧に回す」ではなく、“今より一歩ラクにする”粒度で。
・周囲の配慮を期待するだけでなく、自ら働きかける提案・調整が、復職後の働きやすさをつくります。
・1週間ごとに「試す→見直す→続ける」のサイクルを回す。

“目標”とは「成果」ではなく、「毎日の生活を少し整えるための具体的な行動」。
たとえば「朝の準備時間を5分前倒しする」「昼休みに持ち物チェックをする」だけでも、
次の週のバタバタは確実に変わります。

STEP3:「家と職場の境界線」を整える

復職後の混乱は、家庭と仕事の“境界線のあいまいさ”から生まれます。

  • 時間の線引き: 夜21時以降はメールを見ない設定に。
  • 空間の線引き: 在宅勤務時は“リビングではやらない”場所を決める。
  • 言葉の線引き: 夫婦間では「手伝う」ではなく「担当する」と言い換える。

「全部やる」より、「全部がまわる仕組み」をつくることが目的です。

STEP4:職場には“努力”より“進め方”を共有する

「すみません、できなくて」ではなく、「こう進めると回りそうです」と伝える。
上司や同僚に理解を求めるより、
再現性ある“進め方”を共有する方が、安心して任せてもらえます。

【伝え方例】

現在、朝の時間を使って集中業務に取り組んでいます。
夕方以降は対応が難しいため、できるだけ前倒しで進めたいと考えています。
まずはこの形で3カ月ほど試してみて、必要に応じて調整させていただけませんか?

STEP5:自分に“努力”ではなく“小さな評価”を与える

復職後しばらくは、
「頑張っているのに、誰にも気づかれない…」という孤独感がたまりやすい時期です。

  • 今日できたことを3行で書く(完璧でなくてOK)
  • 例:「早退前にA資料を前倒し提出」「洗濯物を朝のうちに回せた」

小さな達成を見える化すると、“停滞感”が“積み上げ感”に変わります。
自分を褒める“ひとこと業務ノート”をつけてみましょう。

まとめ:戻るのではなく、「今」に合わせて整える

復職とは、「前の自分に戻ること」ではなく、
“今の自分にちょうどいい働き方を整えていくこと”です。

完璧より、動けることを優先する。
「迷いながら整える」ことこそ、リスタートの第一歩です。

【今日からできる3つのこと】

  • ノートに1日の24時間を書き出す
  • “詰まり時間帯”に★マークをつける
  • 明日、1つだけ動かせることを決める(例:会議を5分短縮)

私たちが女性のキャリア支援で大切にしていること

私たちは、復職期の“働き方の整え直し”を、
制度面と感情面の両方から伴走しています。

そろそろ来年の予定を立て始める季節。
最近は、手帳だけでなく、スマホの時間管理アプリにも
便利なリマインダーや共有機能が増えています。

ツールは「頼るもの」ではなく、“上手に使えば暮らしを助けてくれる味方”。
どう使えば自分のリズムが整うか、私たちも日々ご相談を受けながら一緒に考えています。


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成瀬 まい(women_editor)
キャリア支援の実務に10年以上携わり、転職支援・キャリア相談・女性の働き方の課題に向き合ってきました。一児のワーキングマザーとして、妊娠・復職・保活・時短勤務など、女性が直面しやすいキャリアの壁も自身で経験。丁寧な対話で思考を整理し、無理なく続けられるキャリア設計と選択肢の提示を大切にしています。

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