選ばれるためでなく、“会社と自然に向き合える”ために。内定者・新卒・第二新卒が身につけたい「働く原理原則」
日本の就職教育は、「どんな仕事を選ぶか」というキャリア選択の側面に強く偏ってきました。
自己分析、ガクチカ、面接対策など、“選ばれる”ための準備が中心です。
もちろんこれらは大切ですが、本来、働くことにはもうひとつの重要な側面があります。
しかし日本では、この“もうひとつ”を学ばないまま社会に出ることが多いのです。
日本に不足してきた「労務リテラシー」
その“もうひとつ”が労務リテラシーです。
労務リテラシーとは、どの会社・どの仕事でも共通して必要になる「働く原理原則」への理解を指します。
- 労働契約とは何か
- 就業規則の役割
- 労働時間・休憩・休日
- 有給休暇の仕組み
- 職務範囲と役割
- 相談・調整の基本
- 退職手続きの原則
これは「就職=キャリア選択」とは別で、働くための基礎です。
しかし日本では、この基礎知識を体系的に学ぶ機会が長く不足してきました。
働く上で必要な「2つのリテラシー」
① キャリア選択リテラシー(どんな仕事を選ぶか)
→ 日本の就職教育は主にこちらを強化してきました。
② 労務リテラシー(働くうえの共通原理原則)
→ 雇用契約の“対等さ”を支え、働きやすさの土台になる知識です。
日本では長くこの②労務リテラシーが抜け落ちていたため、
仕事への意欲は学べても、働くという日常の扱い方を知らないまま入社する社員が多くなっています。
社員がつまずくのは「問題が起きた時の扱い方」を学んでいないから
多くの社員がつまずくのは、仕事そのものよりも、“いざ”という時の扱い方です。
- 仕事量が急に増えた時、整理方法がわからない
- 説明と業務内容が少し違う時、どう伝えていいか迷う
- 有給取得をどう切り出すのが自然か分からない
- 気になる点があっても、相談の入り口がつかめない
これらは働いていれば自然に起こる“揺れ”です。
問題は、この“揺れ”への対処方法を誰も教えてくれないこと。
能力不足ではなく、ただ労務リテラシーを学ぶ機会がなかっただけです。
労務リテラシーは“自分の働き方を整える土台”
労務リテラシーは、誰かと争うためのものではありません。
自分が安心して働くために、知っておくべきことを知っておくという、ごく自然な準備です。
雇用契約には、社員と会社の双方に「権利」と「義務」があります。
これは上下ではなく、対等な立場の合意で成り立つものです。
理解しておくと、次のような働きやすさが生まれます。
- 自分の状況を冷静に整理できる
- 上司・人事に落ち着いて伝えられる
- 誤解やすれ違いが減る
- 無理のない働き方の基準が持てる
- 相談・調整がスムーズになる
- トラブルになる前に対処できる
労務リテラシーは、労働者として、組織で働くために準備しておくべき
“自分を守るための標準装備”のようなものです。
労務リテラシーを“やさしく5回シリーズ”で解説します
働くうえで欠かせない原理原則を、全5回のシリーズで整理していきます。
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第1回:労働契約とは何か? — “対等”の意味
▶ 第1回の記事はこちらから -
第2回:労働時間・休憩・休日の基本
▶ 第2回の記事はこちらから - 第3回:有給休暇のしくみと使い方
- 第4回:就業規則は“会社の憲法” — 読み方のコツ
- 第5回:相談・調整・退職の基本動作
