退職後しばらく無収入になる期間をどう過ごすか
―失業給付・保険・税金・年金と向き合うために―
1. 不安を整理する
退職を決めたあと、多くの人が直面するのは「収入が途絶える不安」です。
しかし、不安をなくすことは難しくても、退職後に必要なお金(失業給付・健康保険・住民税・年金)を整理し、生活設計を立てれば、必要以上に追い詰められずにすみます。
つまり、知識と準備が安心につながります。
雇用保険の詳細は 厚生労働省の雇用保険制度↗ にまとめられています。
2. 退職後すぐに関わる制度
失業給付(雇用保険)
まず支えになるのは失業給付です。一定の加入期間があれば受け取ることができ、退職後に離職票を持ってハローワークで手続きを行います。
待機期間を経て支給が始まり、非課税所得なので所得税や住民税はかかりません。
そのため、「いくら・いつまで受け取れるのか」を把握することが生活設計の出発点になります。
詳しい手続き方法は ハローワーク公式サイト↗ をご確認ください。
健康保険
退職後は、健康保険について大きく3つの選択肢があります。どれが有利かは退職時の収入・前年の所得・扶養可否によって異なります。必ず試算・確認をして比較検討しましょう。
任意継続
退職前に加入していた健康保険を最長2年間継続できます。
- 保険料:会社員時代は会社と折半でしたが、退職後は全額自己負担(本人負担×2)になります。
- 計算方法:
「退職時の標準報酬月額」と「協会けんぽ全被保険者の平均標準報酬月額(毎年4月改定)」のいずれか低い方が基準になります。これが実質的な“上限”です。 - 特徴:
◎高収入だった人:上限で頭打ちになるため、国保より安くなるケースが多い。
◎中~低収入だった人:上限の恩恵を受けられないため、国保のほうが安い場合もある。
国民健康保険(国保)
任意継続や扶養に入れない場合は、住む自治体で国保に加入します。
- 保険料:前年の所得に基づいて「所得割+均等割+平等割(+介護分)」で計算(自治体により異なる)。
- 特徴:
◎退職直後は前年の収入で高額になることがある。
◎翌年度は「所得ゼロ」となるため、大幅に下がるケースもある。
健康保険の切替については 協会けんぽ↗ の案内が参考になります。
国民年金
さらに、厚生年金から外れると自動的に国民年金に切り替わります。
月額約16,000円の保険料が必要ですが、所得が大きく下がった場合は「免除・猶予制度」を申請できます。
つまり、未納にせず制度を使うことが将来の年金額を守ることにつながります。
住民税・税金
退職直後に意外と重くのしかかるのが住民税です。前年の所得に基づいて計算されるため、無収入でも納付義務は続きます。
しかし、収入が大幅に減った場合には減免制度がある自治体もあります。必ず窓口で確認してみましょう。
また、失業給付は非課税なので安心です。確定申告が必要になるのは、退職前の調整不足や副収入があるケースに限られます。
介護保険料(40歳以上)
40歳以上の方は、国民健康保険に加入すると介護保険料も同時に発生します。所得に応じて算定され、無収入でも一定の負担が残ることがあります。
3. 無収入期を乗り切るための生活設計
失業給付を柱にする
まず大前提として、退職後しばらくの生活を支える柱は失業給付です。
給付額と受給期間を確認し、その枠内で生活費と固定支出(保険・年金・住民税)をどう配分するかを考えます。
就職活動とスキルアップに専念する
失業給付は「積極的に求職活動をしている人」に支給されます。
したがって、この期間はアルバイトではなく、就職活動と次の収入の柱を探すことに専念する必要があります。
履歴書や職務経歴書の準備、求人探索、面接練習、資格取得やスキルアップに取り組むことで、無収入期を前向きに過ごせます。
専門家に相談する
さらに安心するためには、専門家の助けを借りるのも有効です。
ハローワークの相談員、キャリアカウンセラー、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーなどに相談すれば、失業給付と健康保険・住民税・年金をどう組み合わせて生活設計すべきかを具体的にアドバイスしてもらえます。
一人で悩まず相談することで、現実的な解決策が見えてきます。
4. 次のステップへ進むために
無収入期をただ耐えるのではなく、次のキャリアにつなげる準備期間に変えていきましょう。
- 就職活動をルーティン化し、計画的に応募・面接準備を進める
- 無料や低コストで学べる講座や教材を活用してスキルを磨く
- 転職エージェントや公的機関を活用し、人脈や情報を広げる
つまり、「待つ時間」ではなく「動く時間」にすることで、将来への不安を具体的な行動に変えられます。
5. まとめ
退職後しばらく無収入になると、次のような義務的なお金が必ず発生します。
- 健康保険料(任意継続/国保/扶養)
- 国民年金保険料(免除・猶予制度あり)
- 住民税(前年所得に基づいて課税)
- 所得税(退職時の年末調整や副収入次第で申告が必要)
- 介護保険料(40歳以上)
まとめると、失業給付を柱に据え、制度の手続きを正しく進めながら就職活動に専念することが、この時期を乗り越えるカギになります。
そして、困ったときは専門家に相談することで、悩みを一人で抱え込まず、安心して次のステップへ踏み出すことができます。
