第1回:労働契約とは何か? — “対等”の意味
働くうえで最初の土台となる「労働契約」の基本を整理します。
みなさんが会社で働き始めるとき、最初に交わすのが「労働契約(雇用契約)」です。
これは簡単に言えば、
「この条件で働きます」「この条件で雇います」という、お互いの合意に基づいた約束です。
契約には、こんな内容が含まれます:
- 勤務先(どこで働くか)
- 業務内容(どんな仕事をするか)
- 勤務時間・休日・休憩
- 賃金・支払いのタイミング
- 契約期間(期間の定めがある場合)
みなさんは一方的に雇われる立場ではなく、「対等な契約当事者」だということです。
「指示されたら全部従わなきゃ?」という疑問に
会社には「業務命令権」があり、社員には「業務指示に従う義務」があります。これは働くうえでの基本です。
ただし、それはなんでもかんでも従う義務があるということではありません。
特に「契約内容と全く異なる仕事」を突然任された場合は、立ち止まって整理することが大切です。
たとえば:
- 営業職なのに、いきなり倉庫作業を指示された
- 面接ではオフィス勤務だったのに、現場常駐を求められた
- 急な部署異動や夜勤への一方的な命令
判断に迷ったときこそ、「おかしいかも」と思う感覚を大切にしてください。
判断に迷ったときの整理ステップ
何か違和感があったときは、すぐに拒否したり、我慢し続けたりせず、まずは以下の3つを整理してみましょう:
- 契約書や労働条件通知書に何が書かれているか?
- 就業規則にどんなルールがあるか?
- 実際の仕事と比べてズレがないか?
「就業規則」って、読んだことありますか?
労働契約が「個人と会社の約束」だとすると、就業規則は「会社全体のルールブック」です。
社員が10人以上いる会社では、法律により就業規則の作成と届け出が義務づけられています。
内容にはたとえば:
- 勤務時間や残業・休日出勤の扱い
- 遅刻・欠勤・休職のルール
- ハラスメント防止、懲戒、退職手続き
💡あわせて知っておきたい:働くルールのしくみ
「ルールって、誰が決めてるの?」と思った方へ。働くうえでのルールは、次のような3層構造でできています:
| ルールの種類 | 誰が決める? | 主な内容 |
| 法律(全国共通) | 国(最低ライン) | 労働時間、有給、割増賃金など |
| 就業規則(社内ルール) | 会社 | 遅刻早退、残業手続き、退職ルールなど |
| 労働契約(個人の約束) | 会社と社員 | 勤務地、仕事の内容、給与など |
ポイントは、契約や就業規則が法律を下回ることはできないということ。
最低ラインは守られ、その上に会社独自のルールが乗っているイメージです。
労務リテラシーとは、法律用語を覚えることではなく、自分と会社のあいだにどんな約束やルールがあるのかを知る力です。
「知っている」ことで、こんな変化が起きます:
- 有給の取り方に自信がもてる
- 働き方の違和感に気づきやすくなる
- 上司への相談が冷静にできる
📘 次回予告:「働く時間」の原理原則を整理します
次回は、労働時間・休憩・休日など、日々の働き方に欠かせない「時間のルール」について、実務的に整理していきます。
