第4回 「すみません」を1日3回までにするチャレンジ――職場では「共有させてください」が最強説
「今日も“すみません”しか言ってないかも…」と思ったら
会議でもチャットでも、口を開けばまず「すみません」。
ふと自分の発言やチャット履歴を振り返って、モヤっとしたことはありませんか?
・「すみません、今日だけ早く上がってもいいですか?」
・「すみません、子どもが熱を出してしまって…」
・「すみません、このタスクだけ締切延ばしてもらえませんか?」
気がつくと、1行目がだいたい「すみません」から始まっている。
自分で見てちょっと笑えてくるけれど、どこか苦しくもある、あの感じです。
もちろん、謝ること自体は悪いことではありません。
ただ、「謝るほどではないこと」まで全部“すみません”で包んでしまうと、
- いつも「申し訳ない側の人」になってしまう
- 仕事の相談が全部“お願いベース”になる
- 周りから見ても、何が起きているのか実はよく分からない
という、ちょっと損な状態になりがちです。
このコラムでは、
「すみません」を少しだけ減らして、「共有させてください」を増やしていくためのヒントを、
実際のシーン別フレーズと一緒にお届けします。
1. ワーママあるある「すみません症候群」
ワーママ生活って、とにかく時間との勝負ですよね。
- 保育園の送迎時間は動かせない
- 子どもの発熱は、会議の予定表を読んでくれない
- 家事・育児があるから、残業は基本NG
これだけ「制約」があると、
「なんか、いつも周りに迷惑かけている気がする…」
という気持ちがじわじわ積もってきます。
そして、
- 「時短なのに、これ以上は頼みにくいな…」
- 「産休前みたいには働けてないし…」
- 「評価に響いたらどうしよう…」
といった不安が重なると、
とりあえず“すみません”と言っておけば無難、というモードに入りがちです。
結果として、
- 発言するとき → とりあえず「すみません」
- 相談するとき → とりあえず「すみません」
- 手伝ってもらったとき → 「すみません、ありがとうございます」
という、“なんでもすみません”状態に。
でもこれ、裏返すと、
自分を守るための言葉が「すみません」しかなくなっている
ということでもあります。
2. 「謝る」から「共有する」に変えると、何が起きる?
同じことを伝えるにしても、
「すみません」スタートと「共有させてください」スタートでは、
相手が受け取る印象がけっこう違います。
例1:勤務時間の話
×「すみません、保育園のお迎えがあるので、残業ができなくて…」
〇「共有させてください。平日は17時までの勤務です。
その分、午前中に●●の対応を集中して進めます。
どうしても夜の対応が必要な案件は、事前にご相談させてください。」
言っている中身はほぼ同じなのに、
- 前者:迷惑をかけている「謝罪モード」
- 後者:情報を出して、一緒に進めようとする「チームモード」
になります。
例2:子どもの体調不良
×「すみません、子どもが熱を出してしまって、今日は急きょ在宅勤務にしてもいいですか?」
〇「共有させてください。子どもが発熱したため、本日は在宅勤務に切り替えます。
オンラインでのミーティングと、●●の作業は予定通り対応可能です。
対面が必要な業務は、明日以降にリスケさせてください。」
後者のほうが、
- 何ができて、何ができないかが分かる
- 予定変更の影響がイメージしやすい
- 「一緒に段取りを考えよう」という空気になる
ので、結果的に信頼されやすくなるのです。
3. シーン別「すみません → 共有させてください」変換例
ここからは、よくあるシーン別に
そのまま使える言い換えフレーズをまとめてみます。
3-1. 働き方・スケジュールを伝えるとき
×「すみません、明日は子どもの行事で午後からお休みをいただきたくて…」
〇「明日午後、子どもの行事のため不在となります。
●●のタスクは午前中にここまで対応します。
急ぎのご相談があれば、午前中までにいただけると助かります。」
×「すみません、会議の時間、もう少し早めてもらえませんか?」
〇「共有させてください。保育園のお迎えで18時には退社する必要があります。
もし可能であれば、会議を17時スタートに変更できないかご相談させてください。」
3-2. 仕事量・締切を調整するとき
×「すみません、この量はちょっと厳しくて…」
〇「今週のタスク状況を共有させてください。
・A:水曜締切
・B:金曜締切
・C:随時対応
で手一杯の状況です。
新しくいただいた●●を進める場合、どのタスクの優先度を下げるのがよさそうか、相談させてください。」
×「すみません、締切に間に合わなそうです…」
〇「現状の進捗を共有させてください。
●●までは完了していますが、△△にもう半日ほど必要な状況です。
品質を保つためにも、締切を明日正午まで延ばしていただけないかご相談したいです。」
3-3. “ちょっと言いづらいこと”を伝えるとき
×「すみません、このやり方だと少しやりにくくて…」
〇「共有させてください。実際に手を動かしてみると、
この手順だと●●の確認が抜けやすいと感じています。
▽▽のやり方に変えると、ミスが減らせそうなのですが、いかがでしょうか?」
こうして並べてみると分かるのは、
「共有させてください」は魔法の言葉ではなく、
“情報+見通し+相談”をセットで出すスイッチだということ。
「すみません」を封印する必要はありません。
ただ、“最初の一言”を変えるだけで、会話の空気はかなり変わります。
4. 「共有する人」は、自分もちゃんと守っている
「そんなに丁寧に説明していたら、逆に疲れない?」
と感じた方もいるかもしれません。
でも実は、“先に共有しておく”ことは、自分を守るクッションにもなります。
- 事前に状況を出しておくことで、「聞いてない」「そんなつもりじゃなかった」を防げる
- 事情と意図が伝わっているので、評価が“印象だけ”になりにくい
- 「私はこういう働き方をしている」というメッセージを、少しずつ積み重ねられる
完璧に説明する必要はありません。
家庭の事情を根掘り葉掘り話す必要もありません。
「会社に関係する範囲だけ、簡潔に出す」
そのくらいの感覚で十分です。
5. 今日からできるミニチャレンジ
いきなり「すみません禁止!」にすると、
それはそれでストレスになるので(笑)、まずはゆるいチャレンジから始めてみてください。
- 今日1日で、「すみません」と打ちそうになった回数をなんとなく数えてみる
- そのうち1回だけでいいので、「共有させてください」で始めてみる
- 「言ってみたらどうだったか」を、帰り道に少しだけ振り返ってみる
これを1週間続けると、
自分のコミュニケーションのクセが少しずつ見えてきます。
- 「あ、ここは本当は相談したかったんだな」
- 「ここは、謝るより“状況説明+提案”のほうがよさそうだな」
そんな“気づきメモ”がたまっていくと、
自分らしい「共有させてください」の言い方が自然と育っていきます。
番外編|当社のビジネスマナー講師に聞いてみた
「すみません」って、本来どんなときに使うもの?
ここで一度、Restart退職サポートの
ビジネスマナー研修を担当している講師にも聞いてみました。
「ビジネス的に見ると、『すみません』は
“ここぞ”というときの切り札なんです」
とのこと。ざっくり分けると、出番はこの3つ。
① 自分のミス・遅れ・抜けが明らかにあったときの謝罪
例)「こちらの確認不足で、納期の認識にズレがありました。すみませんでした」
② 相手の時間や手間を、かなり使わせてしまったとき
例)「お忙しい中、何度もお時間をいただいてすみません」
③ ルールや約束を、自分の事情で変えてもらう“お願い”のとき
例)「直前のお願いで大変すみませんが、開始時間を30分早めさせていただけますか?」
このあたりが、「すみません」が本気を出すべきタイミングです。
一方で、ついこんなシーンでも使ってしまいがちです。
- 普通に質問したいだけなのに → 「すみません、一つだけ質問してもいいですか?」
- 相手が助けてくれたとき → 「すみません、ありがとうございます」
- 会議にちゃんと間に合っているのに → 「すみません、お疲れさまです〜」
講師いわく、
「本当は『ありがとうございます』『お時間いただき感謝します』で足りる場面まで、
ぜんぶ“すみません”で包んでしまうと、
自分から“いつも恐縮している人”ポジションを取りに行くことになるんです」
とのことでした。
ジョークまじりに言うと、
“すみません連発”は「永年・下座ポジション会員カード」への自動加入みたいなもの。
- 発言するとき → とりあえず謝る
- 相談するとき → とりあえず謝る
- 手伝ってもらったとき → 感謝より先に謝る
これを毎日くり返していると、
「私はいつも迷惑をかけている側なんだ」
というストーリーが、自分の中でも周りの目から見ても、だんだん固まっていってしまいます。
口癖が、そのまま“立場のクセ”になっていくイメージです。
じゃあ、どう切り替えればいいのか?
講師のおすすめは、「言葉に役割分担をさせる」こと。
- 謝るべきとき → しっかり「すみません(でした)」
- 助けてもらったとき → 「ありがとうございます」「助かります」
- 状況を伝えたい・相談したいとき → 「共有させてください」「ご相談させてください」
まずはこの3つを意識して使い分けるだけで、
ビジネスコミュニケーションの印象はかなり変わります。
「すみません」をゼロにする必要はありません。
ただ、
とりあえず口から出る最初の一言を、
「すみません」から「共有させてください」「ありがとうございます」に
少しずつ入れ替えていく
それだけでも、あなたの“立ち位置”はじわじわ変わっていきますよ。
📚 関連記事
-
▶ 序章 育休後の復職は“リスタート”──5つの視点で整えるキャリア再設計
【序章】育休後の復職は“リスタート”──5つの視点で整えるキャリア再設計
この記事は、これから5回にわたってお届けする「育休後の復職リスタート」シリーズの序章です。 育休後の“働き方・気持ち・環境”をどう整えていくか——。 5つのテーマを軸…
-
▶ 第1回 復職は“リスタート”。元に戻すより、新しく整える
【第1回】復職は“リスタート”。元に戻すより、新しく整える
そろそろ、来年の手帳を選ぶ季節。 街に並ぶカレンダーやスケジュール帳を見ると、 「来年こそ、時間をうまく使いたいな」と思う人も多いのではないでしょうか。 育休から…
-
▶ 第2回 最初の3カ月は“リハビリ期間”──30・60・90日の整え方
第2回 最初の3カ月は“リハビリ期間” 30・60・90日の整え方
——復職初期の“生活が回らない問題”を仕組みで解消するステップ 「朝だけで一日分、働いた気がする」 復職初日。 子どもの着替え・連絡帳・自分のPCとお弁当。 全部を抱え…
-
▶ 第3回 保育園は“預ける場所”ではなく“パートナー”
第3回 保育園は“預ける場所”ではなく“パートナー”
——ワーママ救われた瞬間ベスト5入りの話 こんにちは、「働く女性のキャリア伴走係」の成瀬まいです。 今日は、私が復職直後にガチで救われた話をします。 🌞朝の「…
